Kanonピアノ教室の日記

指導歴26年の海外ピアニスト講師がつづります。英語も教えています

16年前の今日、生まれてきてくれてありがとう。

 16年前、陣痛と出産がこんなにも大変だと思わなかったと同時に、この世に大切ないのちが誕生した。

 生まれてきたその日、それは嬉しくて可愛くて、一晩中抱きしめて寝れなかったのを覚えている。

 後から思うと、この時に寝てなかったせいで、後に母子同室の病院でほとんど寝られないという事を後悔することになったのだが…

 

 生命というのは不思議なもので、教えられていないのに自然に口で母乳を探すのだ。

 

 ウミガメの赤ちゃんも、教えられてないのに海に向かっていく。

 生きようとする生命力は、そもそも生まれた時から持っているのだと実感する。

 

乗り越えられない試練は与えられない

 翌日に、先生に呼ばれて「心雑音がありますね」と、さらっと言われる。

 耳慣れない言葉に、「しんざつ?それはなんですか?」とたずねると、「あ、聞いてませんか?心臓に穴があると心音に雑音がでるんです」

 頭が真っ白になった上に、出産後で疲労困憊で、それを受け入れる余裕はなかったが、とりあえず、母になったのだから大泣きだけはしないぞと、唇をかみしめた。

 

 しかし、これを周りに伝える事、しばらくの病院通い。すべての負担が一気に押し寄せる。

 きっと、神様は乗り越えられない試練は与えないだろう。だから、この子は私の子として生まれてきたんだ。

 と、強く思ったのを覚えています。

 

初めての挫折と言えば挫折

 人間は思い通りにならないものに対して、どういう風に乗り越えていくかという事はとても大変な事である。

 そういう、心臓専門の病院に通院すると、もっと、重症の手術が必要な子。手術しても助かる見込みが薄い子。もちろん、亡くなってしまう事も…。

 

 先生に、「あと、3か月で、筋肉が発達し、完全に穴がふさがれば、体育はできますが、ふさがらない場合は見学になりますね。ふさがる確率は70%です。」と、はっきり言われた。

 まだ、命の危険があるわけではないが、初めて、涙が止まらなくなった。

 こういうことがあると、つい、自分のせいで、健康な子を産まなかった。と、親というのは自分を責めるのだ。

 妊娠中の食事やカフェイン。妊娠してると気づかず飲んだアルコール。

 勿論、そのせいではないのだが、いろいろな考えが自分を責め、そのうちに、自分の心臓と換えられないかという思考になる。

 その時、泣く私を見て母が笑顔でこう言った。

 「良かったじゃない。これで、大切に育てられるね。」

 

 母は強し。というけれど、育て上げた母はやはりすごいな。と、改めて思ったのであった。

 

この日が来ると鮮明に思い出す。

 かけっこで、一番でなくても、勉強が出来なかったとしても、生きてさえいてくれればいい。

 そう思った、初心に帰る日。

 それが、息子の誕生日だ。

 毎年、この日は、そのことを思い出す日。

 そして、一緒に子育てした心臓病を抱えていたママさんたちのこと。

 

 今年は、体育祭に行けなかったけれど、初めての運動会は、それはうれしくてうれしくてうれしくて…

 

 誕生日は生まれてきてくれてありがとうの日。

 そして、母に生んで育ててくれてありがとうの日。

 

 今日はノンストップで8時までだけど、どうせみんなも塾でいない。

 大きいケーキと大好きな料理を今のうちに用意しなくては!

 おそらく、一緒にお祝いできるのもあと数年ですから。